翌朝から高島は本当に突貫で仕事をし始めた。

下地剤は翌日には塗り終えて、早速塗料を買い込んで色合わせをしている。


(後2日足らずで壁を塗り終えられるのかしら…)


3日で塗り終えると言った限りはやり遂げそうな気がする。

仕事に関して妥協しない雰囲気があの男にはある。




「おーい!カツラー!」


珍しい。

一昨日の夜から私を無視し続けていた男に呼ばれた。




「……何?」


表情を固くして表に出た。

急に呼ばれても困る。どんな顔をすればいいか分からない。



「色ができたから確認してくれ!」


ペタペタ…と塗料を板に塗り付ける。



「……どうだ?」


桜色よりも紫がかった色に近い。

ふわっと優しく、何処かしら可愛い花に似ている。


「よく似ていると思う」


大したもんだ。さすが職人技。


「じゃあこの色で塗ってもいいか?」


しゃがみ込んだ体勢のままで目線を上げた。


「どうぞ、お願いします」


笑顔も見せずに頷いた。

それを受け止めた高島が、何か言いたそうに口を開く。




「……分かった」


ぐっと噛み締めるように口を閉じた。

その後は一昨日からと同じ雰囲気で黙々と仕事を始めだす。



(また怒った…)



大人気ないな…と思いながらも本当は分かっている。

高島は私が喜びもせずに色を認めたのが、すごく気に入らなかったんだ。