「1人で居れればいいんです!気楽だから」


そう答えたじゃないの。

しつこい。


「一生1人で生きるつもりか?」


「ええ。それが一番の平和ですから」


「平和?」


「そう。平和です」


何事も起きず、心穏やかに過ごせる。


「だから、高島さんも壁塗り終わったら出て行って!」


何度も言いたくない言葉を言わせないで。

私はこの家で1人で生きると決めているの。



呆然としていた高島の顔が、いつの間にか真剣になっていた。



「……呆れる女だな」


溜息を吐かれた。


「そんなに1人がいいならしてやるよ。期限は3日。3日で壁塗りを終わらせる!」


急に断言した。


「3日で?」


できるの!?

…と言うか、どうして急に?


「俺が居ない方が平和なんだろ。だから突貫でやってやる!」


「ご馳走さん!」と手を合わせて食器を流しに運んだ。

声も出せずにいる私の背後で、素早く食器を洗い終える。



「……仕事の続きしてくる」


むっとした横顔で呟き、キッチンを飛び出す。

パタン…と閉められたドアを見続け、モヤモヤとした気持ちが広がった。



「な、何よ!あの態度!」


興奮させる様なものを食べさせた?

それとも、単に怒っただけ?



「それにしては急過ぎるし…」


私の言葉があの男を傷つけでもした?

でも、1人でないと平和じゃないことは確かだし、その理由を高島に教えることもできない。