高島の前ではもう気を失えない。
男の前で意識を失くすなど、あってはならないことだ。
(壁の塗装が終わるまでは気を引き締めておこう。あの男にやたら近づき過ぎないようにしよう…)
思いを新たに家に戻った。
壁の半面には白っぽい下地剤が塗られ、塗っている本人はもう半面を塗ろうとしている。
「おかえり!もうそんな時間か?」
こっちに気づくなりその台詞。
「そうよ。もう6時半」
玄関の扉を開けようとして、ガチッと鍵が掛かっているのに気づいた。
「あれ?」
呟きに気づき。足場に乗ったままの人が答える。
「作業中は鍵を閉めておかないと物騒だろう?」
「じゃあずっと掛けっぱなしだったの?」
「いや、トイレの時だけは開けて中へ入った」
そりゃそうだ。
庭でされても困る。
「それ以外の時は?」
「昼飯の時も開けたな」
それも当然。
「食事とトイレ以外は!?」
業を煮やして聞く。
「うーーん、それ以外は特にないな。家の中に仕事道具がある訳でもねーし」
律儀だというのは認めよう。
用のない限り、主人なき家には入らない…という態度は気に入った。
(まぁ、当たり前と言えば当たり前なんだけど……)
「カツラー、メシ早目に頼む」
前言撤回。やっぱり図々しいだけの男だ。
「分かった。直ぐに取り掛かるから」
やれやれ、私はアオムシのお母さん?
男の前で意識を失くすなど、あってはならないことだ。
(壁の塗装が終わるまでは気を引き締めておこう。あの男にやたら近づき過ぎないようにしよう…)
思いを新たに家に戻った。
壁の半面には白っぽい下地剤が塗られ、塗っている本人はもう半面を塗ろうとしている。
「おかえり!もうそんな時間か?」
こっちに気づくなりその台詞。
「そうよ。もう6時半」
玄関の扉を開けようとして、ガチッと鍵が掛かっているのに気づいた。
「あれ?」
呟きに気づき。足場に乗ったままの人が答える。
「作業中は鍵を閉めておかないと物騒だろう?」
「じゃあずっと掛けっぱなしだったの?」
「いや、トイレの時だけは開けて中へ入った」
そりゃそうだ。
庭でされても困る。
「それ以外の時は?」
「昼飯の時も開けたな」
それも当然。
「食事とトイレ以外は!?」
業を煮やして聞く。
「うーーん、それ以外は特にないな。家の中に仕事道具がある訳でもねーし」
律儀だというのは認めよう。
用のない限り、主人なき家には入らない…という態度は気に入った。
(まぁ、当たり前と言えば当たり前なんだけど……)
「カツラー、メシ早目に頼む」
前言撤回。やっぱり図々しいだけの男だ。
「分かった。直ぐに取り掛かるから」
やれやれ、私はアオムシのお母さん?

