未熟女でも恋していいですか?

食事を済ますと、いつものように高島が食器を流しへ運んだ。

洗おうとするのを制して、自分が食器を洗う。

高島はその間外へ出て、下地剤を塗装する準備を始めた。


通勤の準備を完了して外へ出ると、壁の周りには足場が組まれ、マスキングテープやビニールが貼られようとしている。


仕事に関する限り、この男は単なるアオムシではなさそうだ。

手際も良ければ能率も早い。

しかも、驚くほど丁寧で、隅々まで行き届いている。



(当たり前よね。これで生計立てているんだから…)



自分の仕事と一緒。

ただ、この人には傷がないってだけだ。



「…もう行くのか?」


組んだ足場の上から聞かれた。


「はい。昨夜授業の準備ができなかったから早めに行ってします」


一本早い電車で行く。

朝礼会議の前に予習だけはしておきたい。



「相変わらず色気のねぇカッコしてんな」


上から目線を流して言われる。


「色気よりも機能性を重視してるんです」


本当は女らしい格好をするのが怖いだけだ。


「くだらねぇ理由……」


下らなくて結構。

授業がきちんとできれば問題ない。



「そういう高島さんだって、仕事着はいつも同じじゃない」


「俺は仕事上汚れやすいからから統一してるだけ。カツラとは意味が違う」


「あら、私だって意図があって統一してるだけです」


「どんな」


「それは……」