(年が違うか…)


はは…と小さな笑い声を零してキッチンを出た。


廊下を歩きながら、昨夜の弁明をするべきだろうか…と悩む。



教え子に襲われそうになった。

それがキッカケで、今でも男性が怖い…と……?



(そんなこと言ったら余計にお子様呼ばわりされそう……)


何も聞かれないうちは黙っておこう。

結果的には何事もないうちに救い出してもらえたのだから、敢えて口にすることはない。



(…ただ、私の心に忘れられない傷を残しただけ……)


それが原因でお一人様の人生を歩むことになるかもしれない。

でも、私1人のことだからそれでも一向に構わない。


相手さえ居なければ困ることはない。

だから、一生1人でいるのがいいんだ。



(一生1人…か……)


チクッと胸が痛む。

その思いが過る度に、何処かしらもの悲しくなる。


1人が好きな訳じゃない。

でも、1人でないと困る…。



(どうしろって言うのよ、私に……!)


自分自身で仕様がなくなる。


誰かに相談しようにも事が事だけに話せない。


このまま誰にも話さず、一生胸の内に仕舞い込んでさえいれば、いつか思い出は風化して忘れてしまうことができるのだろうか。



(いつか……っていつ。実際、未だに男が怖いじゃない……!)


ビクビクしながら通勤電車に乗る日々。

女性専用の車両が満員の時は、次の電車を待って乗る。


誰も私の焦りを知らない。

周囲の人には、私の都合なんて関係ないのだから。