「何かあったら呼べよ。仏壇の間にいるから」
「…うん……ありがとう……」
少しだけ顔を上げてお礼を言えた。
目だけは虚ろに空を彷徨っているけれど。
カチャ…とノブの開く音がして、直ぐにドアが閉じられた。
その音を確かめるように振り向き、誰もいないと知ってホッとする。
「はぁ………」
胸の奥から息を吐き出す。
何年も見たことのない悪夢を見て、大声で魘されてしまうなんて………。
「最悪……絶対にばれた……」
高島の握った右手首を見るのもぞっとする。
私は男性に恐怖心を抱いている。
それも原因がきちんとしている。
高校の国語教師として、正式に採用の決まった年度末に起きた暴行未遂事件。
学校側と生徒の保護者から頼み込まれ、一切を表に出さないと約束させられた。
当時、私は25歳だった。
大学を出て3年ばかりが過ぎた頃で、地元でも有名な進学高校の臨時採用教師として働いていた。
勉強のできる生徒達ばかりを相手に毎日追われるように仕事をしていた。
何人かの生徒からはニックネームで呼ばれ、生意気だけど可愛い年頃の子供達を眩しく思いながら生活していた。
あの頃はまだ大学を出て年数も浅く、教師と言うよりかは生徒みたいな気分だったのだろうと思う。
副担任として任されていたクラス代表の子と仲良くなり、まるで姉弟のように接していた。
「…うん……ありがとう……」
少しだけ顔を上げてお礼を言えた。
目だけは虚ろに空を彷徨っているけれど。
カチャ…とノブの開く音がして、直ぐにドアが閉じられた。
その音を確かめるように振り向き、誰もいないと知ってホッとする。
「はぁ………」
胸の奥から息を吐き出す。
何年も見たことのない悪夢を見て、大声で魘されてしまうなんて………。
「最悪……絶対にばれた……」
高島の握った右手首を見るのもぞっとする。
私は男性に恐怖心を抱いている。
それも原因がきちんとしている。
高校の国語教師として、正式に採用の決まった年度末に起きた暴行未遂事件。
学校側と生徒の保護者から頼み込まれ、一切を表に出さないと約束させられた。
当時、私は25歳だった。
大学を出て3年ばかりが過ぎた頃で、地元でも有名な進学高校の臨時採用教師として働いていた。
勉強のできる生徒達ばかりを相手に毎日追われるように仕事をしていた。
何人かの生徒からはニックネームで呼ばれ、生意気だけど可愛い年頃の子供達を眩しく思いながら生活していた。
あの頃はまだ大学を出て年数も浅く、教師と言うよりかは生徒みたいな気分だったのだろうと思う。
副担任として任されていたクラス代表の子と仲良くなり、まるで姉弟のように接していた。

