未熟女でも恋していいですか?

「これと同じ色に塗れる!?」


差し出した写真を手に取り、高島が目を細める。



「可っ愛いー!!何これ!カツラか!?」


見るべきところが違う。

私が見て欲しいのは、幼い頃の自分ではない。


「それはどうだっていいの!私が見て欲しいのはこれ!この花!」


写真を向かい側から指差した。


「藤……?」


高島が呟く。


「そう。うちの庭に咲く藤の花。この花の色と同じにできる?同じでなくてもいいけど、似た様な色合いで塗って欲しい」



咲き始めだけが淡く優しいピンク色に染まる藤。

この花を見続けて35年。

もうすぐまた一つ歳を重ねる。


「ふぅん…できねぇことはないけど塗料がな……」


「何か問題あり!?」


「うん……ちょっと塗料を買わねーと在庫がない……」


「塗料の在庫?」


「うん…」


悩んでいる。

そうか。塗装にもお金ってものが掛かるんだ。



「あ…あの、その塗料代は私が出します!だから、是非その色で塗って!」


身を乗り出すように頼んだ。

高島は真顔で私のことを見つめ、ポカンと口を開けている。



「駄目……ですか?」


上目遣いに見てしまった。

たじろぎながら若干後ろへ仰け反った高島は、目線を外して「いや…」と答えた。


「そうして貰えると実際は助かる。本来なら塗料代も出して欲しくねーところだけど、何せ今は金がねぇから……」