未熟女でも恋していいですか?

唇の端を持ち上げてニヤつく。

まるで、自分が居るからだと言わんばかりのようだ。



「き、気のせいよ!」



そうよ。気のせい。

楽しくなんてなったら負け。

普通でいなくちゃ。



(平常心、平常心…)


呪文のように唱えながら作ったご飯は、まるで数日前にタイムスリップしたかのような和食。


コンニャクのきんぴらに魚の照り焼き、キノコが多く入った汁物に白菜の浅漬け。

そして、見たくもなかった冷奴。



(あーあ…)


こっちはげっそりしているのに、何故か高島は上機嫌で。



「旨そう!カツラは何でも作れるんだな!」


「…まぁね」


面倒くさい。

この際、そういうことにしておこう。



「頂きます!」

「どうぞ」


しまった。つい勧めた。


カッカッ…と箸を運ぶ男を眺める。

気持ちのいい食べっぷりには惚れ惚れするものがある。

でも………



「そんなに美味しい?」


要らないことを聞いてしまった。

高島は箸を止め、キョトンとした顔を見せた。


「旨いに決まってるだろ!」


そうか。

あんたは腹ペコアオムシだったわね。


狼かと思っていたけど、やはり違う気がしてくる。


この人はアオムシ。

ただの宿借りアオムシだ……。



「カツラ食わねぇのか?だったら俺が……」


箸がこっちの皿に伸びてくる。