「すごい……」


ぼんやりとしたまま呟く。

男は自慢そうに鼻の下を指で擦り、「そうだろう?」と胸を張った。



「すごい!すごい!どうやったらこんなに綺麗になるの!?」


今朝の悲惨な状況は何処にも見られない。

全てがきちんと棚に収まり、何が何処にあるのか一目瞭然だ。


「ふふん!大したもんだろう!」


威張る相手を見つめ直す。

腹立たしいけれど、確かに素晴らしいくらいの出来栄えではある。


「本当にビックリするくらい綺麗になってる!ありがとうございます!」


思わずお礼を言ってしまった。


でも、この物置を見たらきっと誰もが驚く筈だ。



「片付けてる最中に潤滑油も見つけたんだ。だから扉の滑車に油も差しといた。もうガタガタ言わねーぞ、やってみろよ」


脱衣場を親指で差す。



「どれどれ」


何だか楽しくなっている。

まずい。またしても向こうのペースに乗せられた。

しかし………




「わぁ、すごい!スルスル~~!」


驚き通り越して感動!

素晴らし過ぎる。


「他の場所も幾つか直しといた。だから、明日は外壁を塗る」


思った以上に仕事の裁ける男ではあるらしい。

図々しいだけかと思っていたけれど、そうでもないみたいだ。



「ねぇ…今日は銀行行かなかったの?」


我が家のメンテナンスよりもそっちの方に真剣になって欲しいから聞いた。