目を覚ますと明け方の5時だった。

起き出すにはいくら何でも早い。でも……


「授業の準備しておこうか…」


その前にトイレに行って何か飲もう。

昨夜は何も飲まずに寝たから喉が渇いて仕方ない。


髪をかき上げてドアに近づく。

ノブを握って押そうとして、開かないから不思議に思った。



(あ…そうか。鍵掛けてたんだ…)


男をまたしても引き込んでいたんだと思い出す。

それならこの格好ではまずい。



(着替えよ…)


仕事用の服を着てパンツを穿く。


通勤スタイルはパンツルックと決めている。

スカートは絶対に穿かない。



「これならいいか」


カーディガンを上に羽織って部屋を出た。

トイレに行ってキッチンへ向かうと、既に起きだして布団を畳もうとしている高島の姿があった。



「……早いのね」


眺めながら声をかけると、高島は作業を中断して顔を上げた。


「カツラも早ぇな。おはよう」


「お…おはようございます…」


誰かに先に挨拶されたのは何日ぶり?

しかも相手は母じゃない。


「昨夜は久しぶりによく眠った。お陰で気分も最高!」


顔ツヤ良く笑う。


「…そう。良かったわね」


母と父に見つめながらでも眠れるこの男の神経はかなりの図太さだと思う。

私ならきっと、悪夢しか見れない。


「もう飯作るのか?」


「まさか。喉乾いたから水を飲もうかと思って……飲む?」