未熟女でも恋していいですか?

部屋を出た後、お風呂場へ向かった。

誰かがお湯を使った後に入るのは何日ぶりか数える。

母が脳梗塞を起こして以来だから、ざっと200日以上にはなるだろう。


高島は自分がお風呂に入った後、どうやら掃除をしてくれていたようだ。

床や洗面器などが綺麗に洗って置かれてあった。

リフォームだのメンテナンスだの言ってはいたが、単なる綺麗好きなだけなのかもしれない。



(助かるけど…)


母と2人だった時は、交代でお風呂の掃除をしていた。

施設で働く母は退職前には疲れていることが多くて、主に料理や掃除をするのは私の役目になっていた。


体を洗ってお湯に浸かった。

ザブッと溢れ返して浸かるような贅沢を、この最近したことはなかった。

このお湯の量も高島が私に気を遣い、入れ足した結果がもたらしていると思う。



(変なところで気を回してる。おかしな人…)


昨夜とは違って手足を伸ばした。

入る前に入れた桜の香りの入浴剤が、リラックス効果を発揮している。



「はぁ……」


大きくて深い息を吐く。

まだまだ信用も置けない人を家の中に引き込んでいるのに、どうしてこんなに気持ちが和むのだろう。


(……信用しちゃいけない。あの人はまだ、アオムシか狼か分からないから……)


ただの左官工ならお金さえ入れば出て行けと言える。

ただ出て行った後、行く場所があるのかどうかは知らないけれど。