「ぷっ…!ふふ……何、今の……!」


笑いを堪えるのが苦しくなり、短い声が出てしまう。


ヒクヒクと腹筋が動くのが分かりだし、余計に苦しくなってしまう。




(もうっ……駄目……っ……限界っ!)



「あっはははははは!」



あー可笑しい。

この腹ペコアオムシは、余程お腹が空いているらしい。




みぞおちを抱え込んで一頻り笑った。

母が亡くなってから、こんなに大笑いをしたことはなかった。



目に涙が滲んできた。

お腹の皮が引きつり過ぎて、痛くてどうしようもない。



「お腹……いたっ………笑い過ぎて………」



「ひでぇ話…」


笑われた本人はムッとしている。

でも、目が全然怒ってない。




(……この人、やっぱり変だ……)



初めて会った時からそう思っていたけど、やっぱり完全には憎めないところがある。

早く出て行って欲しいことには違いないけれど、少し見れる状態にしてからでもいいか。



「……夕飯作ってるの。良かったら食べていかない?肉じゃがなんだけど…」



言い訳は何でもできる。

藤棚を見違えるくらい綺麗にしてくれた。

そのお礼だと言えば一番だろう。


「ついでにお風呂にでも入れば?そのペンキの付いた顔、綺麗にしなさいよ」


昼間、音無さんから気をつけて…と言われた。

私はまだ若いんだから……と。



(…若くないよ、私は。まだまだ、熟れてない女だけど……)