未熟女でも恋していいですか?

「…あの…昨夜も今もサンキューな。…メシ、旨かった!」


にっ…と笑う顔に対し、お礼は要らないと言いたくなる。


明らかに心臓が震えだす。

ブラウスの下にある肺が、何処かしら息苦しい気がする。



「べ、別に、大したことしてない……」



してない、してない…と言い聞かせながら中へ入る。

そして、真っ先に母の仏前に向かった。






「お母さん!何よ!あの男はっ!」


巡り合わせを非難する。


じぃ〜〜っと見つめる眼差しを母の写真が無言で受け止める。

何処かしら楽しんでるように見える顔つきに息を吐き、ロウソクの先に火を点けた。



「南無阿弥陀仏……」


手に掛けた数珠は、生前母が使っていたもの。

透明なガラス玉が繋がった輪はひんやりとした感触を保っている。

その冷たさを感じつつ深く首を項垂れた。



神妙な面持ちで仏壇を離れキッチンへ向かう。

具材を刻んだカッティングボードに目を向け、やれやれ…と小さく声を発した。



「米研ぎからやり直しか…」


ライスストッカーのバネを下ろして米が落ちる音を聞く。

自分1人なら一合炊いてもご飯は余る。

でも、何故だか迷ってしまった。



(少し多めに炊いて冷凍する?それとも明日の分はまた後で炊く…?)


頭の隅を掠った男の顔に首を振る。



あの人は関係ない。

防腐剤を塗ったら出て行く人だ。



(そうよ。もう関係ない……)