未熟女でも恋していいですか?

「ちょっと、何やるの!?」


軍手に再度、手を入れようとしている。


「何って、ペンキが乾いた柱に防腐剤を塗っとくんだ」



でないとまた腐るからな…と説明する。


「そんなの頼んでないでしょ!私は……」


「分かってる!出てけと言うんだろう。でも、俺は仕事を中途半端で終わらせるのが一番好かねーんだ!だから、防腐剤も塗る!」



どれだけ意固地で勝手な男なんだ。

呆れるにも程がある。



「なら好きにすれば!?その代わり、それが済んだら出てってよ!」



くるっと向きを変え玄関へと歩きだす。

カチャン…と缶を開ける音に気づいて立ち止まり振り返ると、背の高い高島は藤棚の下を抜けようとしていた。


刷毛を持った指先が器用に防腐剤を塗り始める。

本人は上機嫌で、鼻歌を交えながらの作業をしている。

空腹が満たされると人は、顔つきや気分までが変化するらしい。



「それって、後どのくらいで済むの?」


玄関の扉を背に聞いてみた。


「そうだな、まあ小一時間もあれば終わるだろ」


一旦手を止めた男が私の方に視線を向ける。

斜め45度の角度で見る男の顔は、やはりどこかイケメン風だ。



(だからって別にどうとも思わないけど…)



「そう、じゃあ」


斜め後ろに目線を下げて振り返ろうとした。



「あ、カツラ…」


「さんっ!!」


向き直って言い足す。

ビクッと体を揺らした男が、「さん…」と小さく付け加えた。