未熟女でも恋していいですか?

微睡みたくなるような午後の授業を終えて放課後になった。

以前勤めていた高校では部活の顧問を任されていたけれど、この学校では何も任されていない。

いい所のお嬢様たちが集まる学校だけに皆お稽古事やレッスンで忙しいらしく、クラブ活動自体が少ないからだ。


ーーお陰で密な授業展開ができる。

明日の資料作りやプリントを準備しても、ほぼ定刻には学校を出られた。





(今夜は何を食べようかな…)


藤棚の修理を頼んだ男のことは既に忘れかけていた。

昨日はすき焼きで贅沢をしたから、今日はアッサリめにしよう…と思ったところで思い出した。




「さすがに居ないよね」


自分自身、確かめるように呟く。



居ては困る。

居て欲しくない…と思いながら簡単な食品を買っていく。



一人分の荷物は軽い。

母と2人、女だけだったとは言え、それでも今よりは多く品物を買っていた。


1人が侘しいと思うのは、これが日常になり始めたから。



自分1人だけの買い物、1人分だけの料理。

洗濯物、食器洗い、計るお米の量も違う。


全てが母と2人の時とは違う。

そして、その全てが侘しい…と思う。



まだ慣れない。

50日かそこらではまだ……。




エコバックを手にしながら母が病院にいた頃が懐かしくなる。

ものも言わなければ目も開けなかったけれど、ただそこに居て、肉体があるというだけで嬉しかった。

それが何より一番の宝物だったし、幸せな時間でもあった。