未熟女でも恋していいですか?

「変なこと認めてないで結婚した方がいいわよ!主人の同僚にいい人いないか聞いてみようか?」


「いい。ご遠慮申し上げます」


「つれない返事ーー!」


あははは…と虚しく笑ってごまかす。



勤め先は私立の女子高校。

帰国子女が多く、いいご家庭のお嬢様たちが通ってくる学校だ。


此処に勤め始めてから5年が経つ。

音無さんとは同年度の異動で知り合い、それ以降の仲だからお互い明け透けなくものが言い合えている。



「……今日帰ったらその左官さんもう居ないの?」


話を元に戻された。


「居ないでしょ…と言うか、居たら困るし」


「そーお?居たら意外と楽しく生活できそうよ。さっきの話を聞いた限りではね」


すき焼きに餅巾着を入れた話を聞かせていた。


「2人とも言いたいこと言い合ってたみたいだし、初対面で会話が続く人ってなかなかいないでしょ?だから、案外と気が合ってたのかもしれないよ?」


「冗談でもヤダ!もう言わないで!」


昼休みのベルが鳴り響いた。

チャペルの鐘の音は、昼休憩と最終授業の終わりだけを告げる。



「午後の授業が始まるわ。行かないと」


「あーあ、また生徒たちに教えるのかー」


「それが仕事でしょ!ボヤかないボヤかない!」


座っていたベンチから立ち上がった。


音無さんはそれでも仕事が引ければ家族が待っている。

誰も待っていない家に帰る私とは全然立場が違う。

年は近いけれど、やはり組は別なんだと思う。



「頑張るか…」


呟く彼女の背中を押しながら、「そうそう。頑張ろう!」と歩き出した。