私は母と二人暮らしだった。

父は幼い頃に病死して、母は私を女手一つで育ててくれた。


介護職員として某施設で働きながらせっせと家事や育児に専念してきた母は、半年前、急に倒れた。

脳梗塞と診断され、意識の戻らないまま人工呼吸器のお世話になって半年生きた。


本当はもっともっと長生きして欲しかった。

意識なんて無くてもいいから私の側にずっと居て欲しかった。



1人にされるのが怖かった。

1人でこの家に暮らすのが不安だった。




「お母さん…私、今日から本当に1人よ。1人って侘しいね。辛いとか寂しいとかじゃない。侘しいんだよ。ホントに…」



遺影に語りかけるのが癖になりつつあった。

卯月の午後、まだ誰とも暮らしてなかった日のこと………。