高島に見送られた後、電車に揺られてデパートへ行った。


(あの人、いつも同じ色のタオルばかり使っているから…)


売り場を回りながらの品定め。

厚手過ぎては頭に被った時、縛りにくい。

だからと言って、薄過ぎてはすぐに裂けてしまう。



「うーーん、結構迷うなぁ」


たかだかタオルなのに。


吸水性まで考え出したらキリが無くなってきた。

迷いながら幾つか候補を決め、選んでいる時だった。

私の目の前を小さな女の子が通り過ぎて行った。



「パパー!」


元気よく走り寄っていく父親に視線を向ける。



(えっ………)


目を疑って、思わず背中を向けた。

棚の陰から見直す若い男のことを、私は片時も忘れたことがない。



(……そうだ、やっぱり間違いない。あの子だ……)


かれこれ10年以上にもなろうかとういうのに判別できた。

楽しそうに笑っている家族連れを目で追いながらも、心の中では叫んでいた。



(どうして……何故そんなに笑っていられるの!?)


今までずっと苦しさを抱え込んできた私の時間は何だったの。

私の傷に比べたら、そっちの傷は軽かったってこと!?


目の前にいる男の周りには、同じ年頃の女性と子供。

2歳児くらいの女の子の父親らしき男は、幸せそうに子供の頬に擦り寄った。


ゾクッとする様な寒気の合間に、少しだけ広がる安堵感。

去って行く背中を見つめながら、流れていった時間の長さを感じた。




(そうか…彼も大人になったんだ………)