「明日、何が食べたい?」


晩メシの食卓を囲み、カツラが聞いてきた。


「お互いの誕生日でしょ?だから美味しい物を作りたいな…と思って」


「カツラの作る物なら何でも旨いよ」


和食でも洋食でも、中華でもイタリアンでも。


「お世辞を聞いてるんじゃないです。希望を聞いてるの」


「すぐムキになる」


「何か言いました?」


「いや別に」


ぷくっと頬を膨らませる。

可愛いと言うか子供だな、やっぱ。


「あー俺、食いたいもんあった」


冗談ついでに本音でも言っとくか。


「何?」


身を乗り出しやがって。後悔すんなよ。


「お前」


「はっ?」


「カツラが食いたい」


「なっ……」


真っ赤になりやがった。

下らねぇこと聞くからだ。


「ウソウソ!冗談!(半分以上本気たけどな)」


困ったような顔見せられた。

そんな風に不安がるから何もできねーんだろうが。


「カツラの作ってくれる物なら何でもいいよ。強いて言うならツマミはもう少し辛くてもいい」


「あ…甘い?」


声上ずらすんな。堪らんから。


「少しな」


「そう……気をつける…」


そこで沈黙か。それも困るな。


「あのなぁ、カツラ…」


「な、何?」


動揺くらい隠せよ。


「藤棚にデカい豆がぶら下がってたんだけど。アレって食える?」


「えっ!?食べてる人見たことないけど……」