「俺が一緒だと安心か?……寂しくない?」


高島の声が優しかった。

頬に触れる指先を通して、ポッ…と火が灯るような温かさが伝わってくる。

じわっと温もっていく胸の奥を感じながら、感謝の気持ちを言葉にした。



「寂しくありません。高島さんと居るとホッとします……」


好きかと聞かれて素直になれなくてごめんなさい。

でも、まだまだ未熟過ぎて大人の対応ができない。


「私はこれまで、ずっと家族以外の人とは住めないだろうと思ってました。だけど、高島さんと暮らしだして、誰かと一緒がこんなにも心地いいんだと思い知らされた。だから………」


震える指先を伸ばした。

ドキドキ…と早鳴る胸の音を感じながら、高島の手の甲に重ねた。


「こんな未熟な女でも、恋をしていいですか?恋をするとしたら……高島さんとがいいです……」


震える唇で喋った。

その言葉を待っていたかの様に、彼の表情が和らぐ。



「…カツラが未熟な女だから、俺が要るんだろう?」


頬を掠めるように撫でていた指先が止まり、掌全体で頬を包んだ。

近づいてきた顔は手を添えたられた方とは違う頬を過り、触れそうで触れない小さなキスを耳元にそっ…と落とした。



「カツラにずっと恋をしていた。あの葬儀の日に見かけた時から……」




『一緒に恋を始めよう…』




高島の囁きに涙が溢れ出た。

ぎゅっと握り直した指先に震えがなくなっていく。



この手を決して離さない。

共に生きてくれる人が、きちんと側に現れた。