火事で住む場所を失い、俺は仕方なく祖母の弟が住職を務める寺に身を寄せた。
『姉さんとこの利かん坊か。噂はよく耳にしておる』
顔を見るなり笑われた。
3人兄弟の中で一番出来の悪かった俺のことを、祖母は散々愚痴ってたらしい。
『住むとこがないなら此処に居ればいい。大した接待はできないが、仕事はくれてやろう』
傲慢な態度だな…と呆れた。
暑い夏の盛りに、本堂の壁塗りをして欲しいと頼まれた。
(くっそー!一刻も早くこの寺から出て行ってやるっ!)
…しかしながら、安い左官料ではアパートは借りられない。
女でも誑かして、部屋に転がり込むのが一番手っ取り早い方法だけど……
(この低収入じゃな…)
左官なんて仕事、世間の底辺みたいなもんだと思われている。
たかが壁塗り。でも、されど壁塗りだ。
『…いい手つきね』
黙々と仕事をしているところに声をかけられた。
『はっ!?』
振り返ってみると、小太りのおばさんが立っている。
「……小太りは失礼でしょう」
目の前に座っている女が口を挟んだ。
「お母さんは確かに痩せてはいなかったけれど…」
3ヶ月前に亡くした母親を庇う。
「いいから黙って聞けよ」
母親にとって、最後の思い出話になるかもしれないんだ。
口を噤んでいやがれ。
「………」
黙れと言われた女が口を閉ざした。
生意気で可愛くないことばかり言う奴だが、料理だけは上手い。
『姉さんとこの利かん坊か。噂はよく耳にしておる』
顔を見るなり笑われた。
3人兄弟の中で一番出来の悪かった俺のことを、祖母は散々愚痴ってたらしい。
『住むとこがないなら此処に居ればいい。大した接待はできないが、仕事はくれてやろう』
傲慢な態度だな…と呆れた。
暑い夏の盛りに、本堂の壁塗りをして欲しいと頼まれた。
(くっそー!一刻も早くこの寺から出て行ってやるっ!)
…しかしながら、安い左官料ではアパートは借りられない。
女でも誑かして、部屋に転がり込むのが一番手っ取り早い方法だけど……
(この低収入じゃな…)
左官なんて仕事、世間の底辺みたいなもんだと思われている。
たかが壁塗り。でも、されど壁塗りだ。
『…いい手つきね』
黙々と仕事をしているところに声をかけられた。
『はっ!?』
振り返ってみると、小太りのおばさんが立っている。
「……小太りは失礼でしょう」
目の前に座っている女が口を挟んだ。
「お母さんは確かに痩せてはいなかったけれど…」
3ヶ月前に亡くした母親を庇う。
「いいから黙って聞けよ」
母親にとって、最後の思い出話になるかもしれないんだ。
口を噤んでいやがれ。
「………」
黙れと言われた女が口を閉ざした。
生意気で可愛くないことばかり言う奴だが、料理だけは上手い。

