「畳み掛けるな」


ニヤついている。


「だって知りたいし」


うっかり身を乗り出してしまった。

仏壇に背を向けている男は、可笑しそうに肩を揺すって笑った。


「そんなに俺のことばかり聞くなよ。少しはカツラのことも話せ」


「話せって……話すことないし」


大体、私のことはちょこちょこ話してきてるじゃない。

父が5歳で亡くなったことも、母が2月の末に亡くなったことも。

忘れられない恐怖体験も、同僚が高島の顔が見たいと言っていることもーー。



「あるだろ?俺に会う前、どんな生活していた?」


「母と二人で平凡だけど穏やかに生きてたわよ」


「男に怯えながら?」


「……そ、そうよ………」



本当は今も少し怖いと思っている。

高島が急に狼になったりしたら、わたしはもう誰も信じられない。



「カツラ……俺のことが好きか?」


「えっ…」


「一緒に暮らせそうだと思ったのもそれでか?」


えっ…!?

えっ…!?

何!?急に。



「わ、分からない……」


咄嗟に誤魔化した。

好きかと聞かれて、「はいそうです」と言える程の大人ではない。



誤魔化しても顔が熱い。

視線が泳いで、直ぐにも嘘がばれてしまいそう。




しーん…と部屋が静まり返った。

まともに高島の顔が見れなくて、気まずい雰囲気が流れる。





「あのな…」


沈黙を破る声がした。

その声の主に目を向け、ゴクリ…と息を呑み込んだ。