「ちぇっ。いちいちチェック厳しいな」


「当然です!私とあなたは初対面の他人ですから!」


「その他人を家に上げて食事を振舞ってくれるというのはどうなんだよ」


「これは救済措置です。行き倒れそうな人に救いの手を差し伸べているだけです!」


「救済措置ね。まあ何でもいいけど」



腹減った……と言う側から腹ぺこアオムシの声がする。

この男の分だけ先に作ってやろうか…と思うけれど、それも何だか切ない話だ。



食材を洗って切って、炒めて煮込んで、出来上がったのは20分後。

フタを開けた平鍋の中を見て、高望みな名前だと揶揄われて育った男は歓喜の声を上げた。



「マジですき焼きだーーー!」



お醤油の香りが食欲を唆る。

取り分けの皿とお玉と箸を渡し、「どうぞ頂いて下さい」と勧めた。





「すんませんっ!頂きますっ!!」


意外にも丁寧に手を合わせて礼をする。

自分が入れて欲しいと頼んだ餅巾着を一番最初に取り、それから他の材料を移した。



「っうめーーーっ!!」



高校男子か……と言いたくなるような言葉遣い。

これも指導してやらないと。



「本当に旨い!マジで旨いっ!!」



カッカッカッ…と、箸の先を器に当てながら食事している。

あまりに早く口に入れるものだから、気になってこっちは食事どころではない。