「うん…。本当にそう思う…」



………お母さん、今の私を見てどう思う?


倒れる前に冗談を言った男と2人、車に乗って出かけているよ。


怖くて絶対に2人きりになんてなれなかった私なのに、不思議とこの人だけは最初から我慢できた。


これもお母さんが仕掛けたトリップ?


だとしても、これがきっと最初で最後になるよ。



……だって、私は恋なんてできないから。


男の人と指が触れただけでビクビクして気分が悪くなって、下手をすると倒れてしまうんだもん。




「カツラ黙り過ぎ!」


運転席の男が喧しい。


「じゃあ歌でも歌えば?」


気分が崩された。


「俺は下手くそだから無理!お前が歌えよ!」


「私は国語教師だと言ったでしょ!音楽は専門外!」


「ったく、すぐあー言えばこう言う。可愛くねーな!」


「ええ、ええ。押しも押されぬアラフォー世代ですから」


「アラフォー言うな!俺はもうすぐ丁度になるんだっ!」


調子づいてきた男の言葉に笑う。


「誕生日いつなのよ」


さり気なくリサーチしてやれ。


「今月の15日だ!」

「えっ、15!?」


ビックリして泣きそうだった涙が引っ込んだ。


「何だ?どうかしたか?」


赤信号で止まった瞬間、顔が振り向く。


「うん……誕生日同じ。私も5月15日なの…」


「えっ!?本当にか?」


「嘘言って何になるのよ」