未熟女でも恋していいですか?

「今なら誰も居ない。…お前のお母さんやお父さんも、此処でなら耳を塞いでくれる」


説き伏せる様な言い方。

差し向けた眼差しを見つめ返して「ほら…」と言葉を投げかけられた。



つぅん…と鼻の奥が痛みたす。

同時に涙が零れ落ちた。




……あの時、恐怖のあまり泣くこともできずに避難した保健室で、同僚の女性教諭からこんな言葉を言われた。




『魔が差したのよ。若い子だから』


勉強し過ぎが原因よね…と囁かれた。

私は恐ろしくて仕方なかったのに誰も慰めてはくれなかった。



『念書を書いて欲しいそうだ。その代わり、本採用は取り消したりしないので安心して下さい』


教頭の言葉は悪魔の囁きだった。

母子家庭で育った私にとって、本採用の教諭になることは母の長年の願いを叶えるものだった。


嫌々ながらに署名して母音を付いた。

親指に残った朱肉の赤は心臓から流れ出る血の様に、いつまでもいつまでも記憶の隅に居座り続けた。





「………生徒に……襲われそうになって…………」



声を詰まらせながらそう切り出した。

高島の顔を見ることができずに、じっと畳の目を見て話した。



「クラス代表も務めるくらい成績優秀な子で……周囲の先生達は……べ、勉強のし過ぎからくるストレスが原因だろう……と言って……でも、私は………っ」



声にするのが怖くなって言うのを躊躇った。