「カツラ」
カシャン…と足場を踏み鳴らして高島が飛び降りた。
振り向いた私の側に来て、上から顔を見下ろす。
「…どうかしました?」
手も指も触れていないのに動悸がした。
体が震えていそうな気がして気持ちが変にフワつく。
いつもになく無表情な顔をした高島が口を開けて、同時に髪の先を撫でた。
「お前、アラフォーなのに綺麗な肌だな…」
あの壁の色に似ている…と囁かれた。
わざわざそんなことを言う為に寄ってきたのか。
「お世辞のつもりですか?何も出ませんよ」
ついでに言うならこれ以上長く住まわせない気でいる。
1人で生きていくと…
1人でないといけない…としか思えないから。
「何も要らねーよ、俺はただ一度くらい褒めるかと思って」
褒め言葉なら幾つか貰ったような気がした。
料理が旨いとか何でも作れるんだな…とか。
(そう考えたら食べることに関してばかりだ…)
アオムシの救済をしているつもりだったのだから当たり前。
美味しいものでお腹を満たされたら、誰もが幸せな気持ちになれる筈だから。
「褒め言葉なら頂いてますよ。食べ物に関してだけ…だけど…」
お一人様の食卓には会話がないと教えられた。
下らないやり取りが多かったけれど、それも今となっては賑やかで良かった。
「俺はカツラ自身のことを褒めたいんだ」

