「優伊にぃさん、ここちょっと教えてほしいところあるんだけど…」
────ベチャ!
プリンが落ちたのは、ちょうどドアを開けた薫くんの持っている、ノートの上。
「………」
静かな沈黙の後。
「うあぁぁぁあ!!!僕の完璧なノートがぁぁぁぁあ!!!」
頭を抱えて叫びだした。
大事…だったのかな…?ノート…
────
泣いている昇くん。
遠くを見ている琢磨くん。
呻き声をあげる薫くん。
いつの間にかいない海里さんと大地さん。
それを見ながら
「はぁ…」
響也さんはため息をつき、
昴さんはマイペースにおばあちゃんの隣でお茶を飲む。
まるで慣れてますとでもいうように。
────私、大変な人たちと兄弟になるのかも……。
沈黙を破ったのは
「ふぁあ~、いい風呂だったぁ~」
と言って入ってきた、桜井くんの声だった。
「え、何?みんなどうしたん?」
相変わらずの明るい声に皆が顔をあげる。
「兄貴聞いてくれよ…」
「優伊にぃ!僕のプリンがね…」
「僕の完璧なノートが台無しなんだ!」
「お、おう?」
戸惑いながら頷く桜井くん。
畳の上にあぐらをかくと、一人一人話を聞き出した。
面倒見のいい、良いおにぃさんだなぁ…桜井くん。
「やれやれだわい」
ひとまず騒動がおさまったところで、おばあちゃんが話し出す。
「独り暮らしは、寂しい時もあるが今日みたいにずっとうるさいと気が滅入るわ
あんたたちみたいに大人しい子達だったら毎日、歓迎なんだけどね」
「…おばあちゃんのお茶は、美味しい…から
…だから、またすぐ来るよ…」
おばあちゃんっこの昴さんが頭を撫でられて嬉しそうに笑った。
「お前も、またおいで」
そう言われてコクンと頷く。
昴さんと同様に頭を撫でられて、心がホワッと温かくなったのを感じた。
