大地さんからの注意を受けて、三人と別れた後、
私たちはサッカーをした、大熊公園に訪れていた。
「…あの…何するんですか…?」
まさかこの年でブランコは遠慮したいんだけど…
「…ただ、ボーっと過ごすだけだよ…」
この美しい瞳をもつ美青年は、どうやらかなりの不思議くんみたい。
ただベンチに座って、ボーとしているだけでも
絵になるから凄く不思議だ。
「…そうですか…」
そういって、私は昴さんが座るベンチの隣に腰かける。
「…」
何を話すわけでもない。
会話は無いに等しい。
だけど何故かそれが心地よい。
何でだろ…?
私、昴さんといると安心するみたいだ。
「あ、…」
昴さんが突然言葉を発すると、近くの茂みにうずくまる。
「…見て、さゆりちゃん…。シロツメクサとタンポポが咲いてる…」
「…本当だ…春ですね…」
いつの間にか冬の冷たさが消えて、春の陽気な風が吹いてる。
この前まで冬だったのに。
あっという間に春になってた。
「────さゆりちゃん…」
ふと、呼ばれて振り向くと昴さんの顔がアップで現れた。
「え…ちょ…近…っ」
思わず、ぎゅっと目を閉じる。
昴さんの暖かい手が私の頬に触れると、
頬にかかる髪を耳へと流して…
「フフ…可愛い…」
中性的な美しい顔で微笑んだ。
赤く染まる私の頬。
な、なんだったんだろう…
何だか耳の上に違和感を感じて手を当てる。
携帯のカメラを起動させて、自撮りモードでそれを見てみた。
大きなシロツメ草とチョコンと隣にある四つ葉のクローバー。
「ね。可愛い…」
「…っ」
人を魅了する破壊的な笑顔と、恥ずかしげもなく言われた発言に、ドギマギする。
シロツメ草と四つ葉のクローバー。
可愛いって…多分、これのことだよねっ…!?
訂正しなくちゃいけない。この人は不思議くんってだけじゃないっ!!
不思議系、無自覚天然たらしだぁ!!!
「───よ、四つ葉のクローバー…なんて、よく見つけましたね…
きっと昴さんの日頃の行いが良いからですよ」
恥ずかしくって、
適当に話しをしつつ、クローバーを返そうと、
耳の上から取ろうとしたら、
その手を制止された。
「…取らないで」
「…で、でも、これは昴さんが見つけたもので…」
「…プレゼント、だよ」
そういって、昴さんは、四つ葉のクローバーを私にくれた。
「…君に幸せが訪れますように…。」
「ありがとう、ございます…」
私の頭を撫でた手は、優しく、そして暖かかった。
────このときの感動をきっと私は一生忘れないと思う。
シロツメクサとクローバーは家に帰ってしおりにしよう。
幸せの象徴は、私の宝物になった。
───本当に私は貰ってばかりだ…。