「ーーー...僕、お姉ちゃんのこと大好きだよ...」


昇くんが涙目で言う。


「お姉ちゃんは僕たちのこと、嫌いだったの...?」


ーーーーあ


私もかつて、この言葉を口にした。


『ママ...私のこと嫌いだったの...?』


昇くんと重なる私の影。

私と重なる母の影。


今、あの時と同じ状況ーーー。


そしてあの人は涙目でこう言った。


『「貴女なんて大嫌い。生まれてこなけてば良かったのに」』



言ってから口を抑えた。
私が1番傷ついた母からの言葉。

絶対言ってはいけない、大きな拒絶の言葉。


それをこんな小さな子に言ってしまったのだ。



「あ...あ...っ...ちが」




ーーー昇くんの瞳からぼろぼろと流れる大きな雫。



見てられなくて、私はその場を走り出した。

傷つけようとした訳じゃないの


そう言って
言い訳したってもう遅い。



「...最低だ、私...」



言葉の刃は、一回さしてしまえば、
もう抜けないのを、私が一番分かっていたはずなのに────。