ふらっ



倒れそうになる瞬間。



目の前で誰かに支えられた。



「あ…響也さん…」



「…さゆりちゃん…やっぱり熱があったんだね…」



「……気のせいですよ…」




響也さんから離れようとすると、腕をとられて、そうさせない。



「こめんね。気付かないで」




ーーーそんな、悲しい顔をしないでよ…。




「私の方こそ……ごめんなさい…」




ーーー…一緒にいたくて、無理しちゃったの。だけどそれは響也さんにそんな表情させるためじゃない…。



「疲れちゃったんだね」



疲れてないよ…。



「ほれ。おぶされ、ベッドまで運んでやる」



大地さんが私の前で腰をおろしす。



「いや…大丈夫です…自分で…ーーひゃ!」



嫌がる自分を無理矢理お姫さま抱っこした。



「お前、黙ってろ。歩くの辛いだろ」



軽々と持ち上げて階段をのぼっていく。



目線が高くなって、内心ひやひやした。



「ーーごめん…なさい」



「兄貴なんだから当たり前。」



「重くない…ですか…?大丈夫ですか…?」



「人の心配より自分の心配しろ」



自分の心配しろなんて、そんなこと言って貰うの初めてかも…。



「おねぇちゃん!冷えピタ持ってきたー!」



「おお、ありがとな、昇。」



ベッドの上の私のでこにそれをつける。



つめた…っ!



ひんやりとした感触に私のぼーとした脳が少し目を覚ました。



「昇くん…ごめんなさい…」



せっかく用意してくれたケーキ、食べたかった。皆とサプライズパーティー、ちゃんと最後までやりたかった。



赤い頬を二人に向け謝る。と。



「おねぇちゃん、泣かないで…」



昇くんが私の頬を撫でた。



「あ……ごめんなさい…」


いつの間にか頬を伝う滴。


可笑しいな私。涙もろくなっちゃったかな?


泣くから悲しくなるんであって、けっして悲しい訳じゃないのにね。




「あやまんな。もう、いっそのこと泣いちまえ!」



「え、どうしてー」



「泣きわめいてスッキリしちまえ!」



「あ、そっかー。」




昇くんは私の頭を撫でて、
『おもいっきり泣いちゃえば?』
と笑った。




胸が…熱い…。





顔を腕で覆って、少し話した。




「ママを……思い出したんです…」



「……」



「悲しいんじゃなくて……胸が痛くてないたんで、大丈夫です…」





グイッとに涙を拭って少し微笑んだ。




「へんな話ししてすみません。」



私は大丈夫だから、大丈夫ですから。




「ありがとうって言って。」




突然、この部屋に響也さんが入ってきた。



「すみませんごめんなさい、より、ありがとうが聞きたいよ?」



そっか…




「昇くん、大地さん、響也さん…ありがとうございました…」



「「「どういたしまして」」」



今度は響也さんの大きな手が私の頭を撫でる。



「さゆりちゃん…少し寝る?」



「…そうですね…そうさせて貰います…ありがとうございます…」



穏やかに微笑んで目を閉じた。