ーーーガチャン……
「ただいまー」
って……誰もいないんだけどね…。
この感じ2日ぶり。
昨日も一昨日も恵美さんがいたから。
ーーーさぁ夕飯の支度しなくちゃ。
制服を脱いで変わりにエプロンを羽織る。
最近、買い物行けなかったから今日は有り合わせで何か作るしかない。
ーー残ったじゃがいもを見てふと思い出した。
「そういえば桜井くん、『肉じゃが、好き』って言ってたな……」
一方的に話してた内容で、『俺の好きなもの』の話し。
あまりに好きなものを熱弁するからあきれてたんだよね。
一番、熱弁したのは『サッカーについて』
オフェンスがどうの、キーパーが凄いのなんの、いろいろと話してた。
本物のサッカーバカなんだよ。桜井くんは。
「本当、どうかしてるよ…あの家族は」
桜井家の人たちは皆、美男美女。
恵美さんは鼻筋が通ってて見惚れるほどの、東洋風な美人さん。
響也さんは雰囲気が優しくて暖かい、イケメンお兄さん。
海里さんはタッパのあるチャラチャラ系モデルさん。
桜井くんは笑顔が爽やかでなつっこい、サッカーバカさん。
玉ねぎを包丁で切りながら考える。
「きっと……他の兄弟たちもイケメンなんだろうなー…」
会いたいと思う私が
意外だった。
優しく暖かい彼らと一緒にいたいーーー。
「あ…れ……なんで…涙……」
ーーー…『一人は寂しいの…』
昔、父に言った言葉。
それはもう、言えなくなった言葉だった。
私はもう一人で大丈夫だと思ってたから。
でも…
ーーー自分が『寂しい』とやっとはっきりと自覚した。
誰かに側にいて欲しい。だけど裏切られるのが怖い。
だから私はーーー今日も嘘をつく。
一人なんて寂しくない。一人が好き。
この涙はきっと
「玉ねぎのせいだよねーーー。」
流れる涙をグイッと拭った。
一人の時の涙なんてむなしいもの。
誰も助けてくれないし、慰めてもくれない。
一人でいきて行くためにも、私はもう泣かないーーー。