「わぁー!これもいいわねぇー!」
あの後、さっそくと服屋に入った。
恵美さんは私に着せる服を『ほらほら』と見せる。
見せたのは真っ白なレース付きのワンピース。
そんな可愛い服……私には絶対似合わないのに。
「春になったらこれ着るといいわっ!」
恵美さんが片手を大きくふって、「店員さーん」と女の人を呼ぶ。
「このワンピースと白シャツとベストとフレアスカートとパンプスと靴下くださーい!」
次々と注文する客にお店の店員も目をつけた。
「こちらも最近売れていますよー」
「いただくわ!」
「…母さん……」
隣で、ため息混じりの声が聞こえる。
それもそうだ。
響也さんの腕の中にたくさん収まるお洋服たち。
これ全部、恵美さんが買おうとしてる物だもの。
「あの…少し持ちます……」
「ああ、ありがとう」
そして私の両手にも進出してくる服の数々。
もう、持てないや……。
「恵美さん……あの…もう、お会計にしませんか……?」
「え、あっ!!!ごめんなさい!また私、夢中になっちゃったのね…」
と、我に返った恵美さん。
財布の中から何かを引き抜くと、『カードでお願い』とレジに出した。
あ、あれはもしや……。
「ゴールドカード……!?」
ーーー全国でも持っている人の少ない伝説のカードではないか!
一括で全部買った恵美さん。
「ごめんなさいねー。私ったら楽しくなっちゃってー」
無邪気に笑いながらペロッと舌を出した。
「それとさゆりちゃん。せっかくだし、買った服着ましょうか!」
え、
まさかあのヒラヒラをはけと言うの!?
無理やり試着室に入れられると私に着させるつもりらしい服をぽんぽんと投げ入れてきた。
「恵美さん……!」
「大丈夫よ。私のファッションセンス信じて。」
そんなキリッとした顔で言われても…。
「勘弁してください……」
本当に私、似合わないと思う。
お洋服はとても可愛いけど、素材が悪いともともこもない。
赤いフレアスカートが目につく。
「……はぁ……」
ため息をついてそれを手にとったーーー。
ーーーシャ!
「……着替えました…」
白いシャツに茶色いベスト黒い靴下とパンプス。そして赤いフレアスカート。
これをレイヤードスタイルと言うらしい。
「さ、さゆりちゃん……ーー超可愛い」
恵美さんベタ誉めすぎる。
恥ずかしい……。
「お似合いですねー」
と、お店の人たちも誉めてくる。
目があった響也さんは微笑んで
「良く似合ってる。可愛い」
と口に出す。
私はもう毛の逆立つような気持ちでいっぱいだった。