「誰がぁ~この俺様ぁ~を!ぶっ殺~す~てえ!?」

禍々しく変な口調で喋る声、その中には下げずんだような感じがある。
背筋が寒くなった気がする。

「ロディン!あそこだ!」

コルマの指をさす方向に目をやる。
ハザベル村で木材をつかった作品が展示されている建物の上にその変な口調な奴が居た。

暗闇によって姿はなんとなくしか見えないが、誰かが居るのは分かる。
ただ……

ーーーあんな変態でオカマなしゃべり方をするような奴がこんなとこに居るのか。

「ひゃ~へへへへ~」

禍々しい声で高笑いする奴……
おぇ……吐き気すんぞ。

「ロディン、来るぞ」

俺が吐き気を模様した時、その声の主は俺達の前に居た。
……なんて速さだ。

「お~前え~ら!俺が~誰え~かってこと~を!しっ~てのこ~となのか~!?」

その声の主は当然男。髪は金でところどころはねており、体躯はゴツい方。
右手には棍棒を携えている。
本当うぜえしゃべり方をするんだな。
ただ、物凄い気迫だな。
だが……

「お前こそ誰だ!変態オカマ野郎!」

「ああ……?」

俺の言葉にその変態口調男は目を吊り上げる。

「てめえ!俺を変態だと!?!?その口、今すぐ黙らせてやるよっ!!」

変態口調男は右手に持ってた棍棒を俺に向けてくる。結構お怒りの様子だ。

「聞くの忘れてたな。お前誰だ?」

コルマの言葉に変態口調男は身を乗り出してくる。………キモいな。やはり。

「俺はテルラ・センの魔神カボイラ!
第五番ラグナル殲滅部隊少尉だ!
てめえらを殺すのが俺様の役目ってことだよ!」
「魔神……お前がか!」
「そうだよ!ここの奴等もこの俺様がやったんだよ!」

こいつ……変態口調男……
いや……カボイラと言ったか。中々の強者かも知れんな。

「コルマ……恨むなよ」
「ロディン……」

コルマが口を開く前に俺は魔神カボイラに向かって地を蹴る。
「我が牙の糧となれ!
クルトアイ!!」
右手から熱が伝わり、青い炎と共に1つの大刀が姿を表す。
精霊クルトアイが刀の形となったものだ。

ここラグナルでは精霊の力を借り自分の力とし姿を武器に変える。それが精霊である。
俺はクルトアイという一発に爆発的な火力を発揮する精霊と契約を結んでいる。

そのクルトアイが姿を変えた刀、蒼雅刀で魔神カボイラの胸に向かって突きを入れる。
ーーー逃げ切れまい!くたばれ!

蒼雅刀が魔神カボイラの胸に刺さる

はずが………

「……っ!なに!?」

なんと刺した筈である魔神カボイラの胸からは煙が上がっている。それから間もなく煙は消え、魔神カボイラの姿が見えなくなった。

「なんだお前?そんな突きで俺を倒せるってか?」

気づけば魔神カボイラは俺の後ろに居た。

……身代わりか?それとも影なのか?

その時、1つの光が一瞬だが見えた。
ーーー来るか。

そう踏んだ俺は魔神カボイラの振る棍棒を避けながら蒼雅刀で凪ぎ払う。

それから距離を取った途端、一閃の光が魔神カボイラの胸を切り裂く。

コルマの操る武器……孝美赦偃月(たかびしゃえんげつ)の一閃である。

コルマの精霊はファイマ。名前からして炎と間違えそうだが、こいつのは光が刃と化すことも出来る精霊である。
殺戮に優れ、口封じにも使えるその精霊ファイマの武器は孝美赦偃月。
偃月刀とも呼べる形をした武器だが、攻撃は光の如く走り、避けるには相当な瞬発力が必要になる。
その一閃をもろに食らった魔神カボイラであろうが、ただでは済まないだろう。

決着はついたと思われた。

「な、なに!?」

なんと魔神カボイラはまた煙と化し体は消え、また姿を現したのだ。
傷はない。無傷である。