真夜中の誘惑


一瞬驚いた女は、すぐニヤッと笑って


「じゃぁ、もうしない。だから、最後にお兄さんが相手になって?」



後ろから座席ごと俺に抱きついてそう言った。


女の顔は俺の顔のすぐ横にある。




「着きましたよお客さん、降りて下さい」


目的地にはもう着いていた。



でも離さない女。




「いや、お兄さんが相手してくれるまで下りない」



駄々っ子かよ。

まだまだ子どもじゃねぇか。


「子どもは相手にしない。大人になってから出直してこい」



きっぱりとそう言うと、女は

「もういい!馬鹿!」


そう言って乱暴にお金を置いていくと車を降りていった。




俺があぁ言っただけで止めるとは思わねぇけど、もう俺のタクシーには乗ってこないだろう。


その事に少し、寂しく思う俺だった。