「風邪ひくから、着替えちゃいな」



部屋に戻って、上着を脱ぎながら怜都が言った。



「え……っと」



後ろ向いてるから、と言って彼は着替え始めてしまった。


キャビンには、部屋以外にお風呂とトイレが一緒になっている部屋がひと部屋ある。


そこは、ママたちのだれが使ってるかな。


仕方なく、ここで着替えることにした。


部屋の端の方にタオルを敷いて床が濡れないように、少し隠れられるように、座って着替える。


シャツのボタンを外していると、背後から話しかけられた。



「ごめんな。俺、不安になってた」


「……どういうこと?」



肩にバスタオルを掛けて下着姿になると、ベッドに座っていた怜都が、動いた音がした。


そしてそのまま、肩に重みを感じて……。


大好きな、怜都のいい匂いが鼻をかすめた。


あたし今、怜都に後ろから抱きしめられているんだ。



「優帆が告白されてるの聞いちゃって、好きって、抱きしめられてるの見ちゃって……。その時初めて知ったよ。優帆に彼氏がいたこと」


「ちょっと待っ……!」



間違いを指摘する前に、首に通された怜都の腕の力が強くなる。


より密着した体に、心臓がうるさい。