「和泉さんはもうレポートは終わったのか?」
「終わりましたよ」
寺田総馬はもうコーヒーを飲み終わって暇なのか、新聞を広げだした。
一面の見出しになっていたのは、ナムト国との戦争のことだった。
『ナムト解放軍、勢力縮小か!?』
そう、大きな文字で書かれていたが、あまり大したことには思えなかった。
というか、この国の国民も皆もうこの話題には飽き飽きしていることだろう。
もう、八年目なのだ。
なんだかんだズルズルと続いたナムト国との戦争。
それは終わりのないまま八年目に突入しようとしている。
始めは圧倒的な戦力差に早々に決着がつくと思われていたが、解放軍のジャングルを利用したゲリラ戦によって泥沼化していった。
「いつ終わるんでしょうか」
「ナムト国のか?」
「はい」
いつだろうなぁ、と寺田総馬は曖昧な返事を返す。
解放軍の勢力が縮小しているんだったらもうすぐじゃないのか、と言われた。
新聞に載っている推定の戦死者の数はすでに百万人を超えている。
百万人の死者を出しているこの戦争。
だが、代理戦争なのだ。
和泉がいる国と、もう一つの大国との。
ナムト国をフィールドとして、二つの大国がチェスをしているようなもので。
現地で死んでいく人達は、ただの駒なのだ。
キングを取るために、いくつもの駒を切り捨て続けた八年間。
ナムト国で生きてた人達にとってはたまったものじゃないだろう。


