「大学院に行くことにしたんだ。」


行こうと思う、ではなく行くことにした、と確定事項として寺田総馬はそう言った。

和泉と寺田総馬が付き合い始めてから一年経った時のことだった。

買い物帰り。
和泉のお気に入りのカフェで一休みしている時に、そう言われた。
和泉はストローから口を外して寺田総馬を見る。

ここのカフェの黒ゴマソフトクリームラテは和泉のお気に入りなのだ。


「そうですか。」


和泉としてはどうでもいいことなのでその一言で済ます。
だが、しいて言うなら、寺田総馬の学歴が良ければ将来良い職につける可能性も高まるだろう。
彼の収入があがるのは素直に嬉しい。

和泉は再びストローに口をつけ飲み始める。


「寺田さんは大学教授になるつもりですか?」

「決めてないな。まぁ、大学でもどこかの研究所でも、研究は続けていきたいと思ってるけどな。」


ふーん、と和泉は思う。
文系の和泉にとって理系の分野は未知だ。
付き合ってはいるが、寺田総馬がどのような研究をしているのかも知らないのだ。

ふとスカートにシワがよっているのが気になって軽く手で直した。
和泉が今着ているのはスナイデルの淡いピンク色のワンピース。
シンプルで裾の広がりも控えめだ。
身体のラインが分かりやすく見えるのが特徴だろう。

ぶっちゃけて言えばこのワンピースは和泉の好みではない。
和泉は紺色とか深緑とか、落ち着いた深い色の服が好きなのだ。
所謂、大人っぽいものが。

ただ、寺田総馬はこのようなパステルカラーのいかにも女の子らしい服が好みらしい。
偶には彼の好みに合った服も着なければ。
そういう義務感で、和泉はこのワンピースを着ているのだ。