「手繋ぐくらいでそんなニヤニヤしないでください」
「和泉さんは冷めてるなぁ。」
「小学生じゃないんですから。」
そんな軽口の応酬に寺田総馬は調子に乗ったのか和泉の腰に手を回してきた。
ゆるく抱き寄せられる。
和泉の頭が寺田総馬の肩にぶつかった。
普段の和泉だったら腰に回った手を叩き落としていたところだが茶碗を持っているのでそんなこともできない。
もしかしたら、と和泉ははたと思った。
寺田総馬がやりたいのはこういうことだったのかもしれない。
今までのデートはとても健全だった。
年齢から考えたら健全すぎるくらいに。
いつもデートでは二人一緒に行動するだけで接触という接触はほとんど無かった。
だが、今日寺田総馬が手を繋ぎたいと言ったことから考えるに、彼はそういうことを望んでいたのではないか。
手を繋いで、腰を抱いて、ハグして、キスして、そういうことを。
「これ、綺麗だな。」
「はい?」
「ネックレスらしいぞ。和泉さん付けないか?」
考え事をしていた和泉の心など知らずに、寺田総馬は店の端のコーナーに目を向けていた。
肩を抱かれそちらへ身体を向ける。
小さなカゴの中に、ぽってりと光るネックレスが無造作に詰め込まれていた。
「あぁ、そこのは七宝焼きのネックレスなんですよ。五十年も前の品物なんでその値段ですけどね、物は良いですよ。当時はそこそこの金持ちの間で流行ったやつらしいです。」
和泉たちに気付いたのか店主がそう説明する。
「へぇ」とカゴを覗き込む寺田総馬。
和泉もつられて中を見てみる。
全品五百円と札が貼ってあってかなり安い。
だが、確かにどれをとっても品があって綺麗だった。
宝石のような主張する美しさではなく、落ち着いた静かな、でも確かにそこに在る美しさ。
何よりも、七宝焼きの透明感がある色合いがとても気に入った。


