「俺から見たら、和泉はあれだな、」

「何?」

「自分で自分に気付いてない感じ。」


気付いていない。

自分では客観視しているつもりでも、出来ていないということだろうか。
つまり、自分ではまだ分かっていない欠点があり、それのせいで未だに大谷から直接的なアプローチをもらえていないということか。

和泉は疑問の目を翔に向ける。


「岡目八目って言いたいの?」

「いや、そんな戦略っぽい話じゃなくて、もっとこう、内面っていうか。」


あー、と翔が言葉を探している。


「出来ないわけじゃないと思うんだ、恋愛っていうか、条件抜きで人を好きになることが。」

「……無理だと思うけど。」

「上手くやれないだけだよ。恋愛って誰もが簡単にやれることじゃないだろうしさ。」


現に俺は苦手だし、と翔は付け足した。

翔に関しては苦手どころの話ではない気がするが。


「一緒に居て楽だって思えるだけでも、理由としては十分なんじゃないか?」


翔はそう言いながらマルゲリータをペロリと完食した。

理由、になるのだろうか。
和泉は数日前一緒に紅茶を飲んだ大谷を思い出す。
大谷と一緒にいると楽、それは本当だ。
変に女の子らしい仕草をする必要もなく、会話のテンポもゆったりとしていて。

だが、世間一般の人は一緒にいて楽だという理由だけでその人に恋をするものだろうか。
今まで漫画や映画や本で見た恋愛とは、もっとやきもきして形振り構わないようなものだった気がする。

好きな人が別の人と楽しそうに話していると嫉妬したり、あれこれと話しかけるきっかけを探したり。

もしも、大谷が和泉の前で他の女の人と楽しそうに話していたとしても、和泉は別になんとも思わないだろう。
和泉が欲しいのは大谷の財力とこれから手にするであろう輝かしい肩書きだから。
大谷の心は要らないし、逆に大谷に和泉の心を求められたら非常に困る。


そう考えたら、翔が言う恋愛に和泉と大谷は当てはまらないと思う。

翔はああ言ったが、やはり和泉は恋など無理だ。

恋愛って誰もが簡単にやれることじゃない。
先程の翔の言葉が和泉の頭の中をぐるぐると回っていた。