キラキラと銀色に輝く宝石箱のそれを、寺田総馬はきょとんと見つめた。
ジルスチュアートのアニバーサリーコレクション、8500円。
ジルスチュアートは安めの価格設定なので少々不満な価格だが、今はこれでいいだろう。
「例えばですね、クリスマスとか私の誕生日とか結婚記念日とかにポンッとこういうのをいくつか買ってくれて、それでいて普段も私に充分に自由に使えるお金をくれる人。そういう人がいいです。それ以外は不倫しようがキャバクラで遊ぼうが構わないんです。」
そう、和泉自身が人並みに他人を愛せない人なのだ。
だったら相手にそれを求めるのは間違っている。
和泉が相手に与えられる物なんて、運良く授かったこの美貌しか持っていない。
一つしか与えられないのだったら、和泉が相手から受け取れる物も一つであるべきだろう。
それが、お金だ。
「和泉さんは、それで、」
そこまで言って寺田総馬は言葉に詰まった。
和泉は音を出さずに一息ついて持っていた箱を元の場所に戻す。
どんなに話し合っても無駄だろう。
寺田総馬と和泉とでは価値観が全然違うし、分かり合えることはない。
一通り新作もチェックしたので次はパピヨネに行こう、と思った時。
寺田総馬が後ろから声をかけてきた。
「和泉さんに今まで色々と物をくれた人達は、和泉さんのことが好きだったんだろう?」
「そうらしいですね。私は断りましたけど。」
「告白は断るのに、物は受け取っていたのか。」
「それでいいと言われたので。見返りを求められないのだったら、受け取っても別にいいじゃないですか。」
しつこいな、と思い和泉は振り向きキッと寺田総馬を見つめる。
身にまとっていたクラシックなワンピースがふわりと揺れる。
「寺田さん、前に私のことをお金持ちだとか言ってましたけど、全然そんなことないです。パーティーの時付けてたカルティエのイヤリングも、このトッズのパンプスもクロエの鞄もセリーヌの財布も、全部男から貰った物です。」
大学生がそう簡単にこんなにたくさんのブランド物を持てるわけないんですよ、と和泉は吐き捨てた。


