和泉は紙袋から目を離し、平塚という男の目をじっと見つめる。
何故、振られたのにこうも貢いでくるのか。
いっそ和泉の気を引きたいだとか、ダシに使ってくれた方が受け取りやすいものを。
何の欲もないなんて、そんなわけないだろう。
人は己のためにしか動けない。
そういうものだ。
「受け取れません。」
和泉がキッパリとそう言うと、平塚は驚いたように目を見開く。
もう買ってしまった後にそんなこと言われても、という想いがビシビシと伝わってくる。
大方、何の見返りも求めなければ和泉は贈り物を受け取るという話を聞いていたのだろう。
それは正しい。
こちらに損が無ければ、和泉は受け取る。
だけど、何だか今はそれを受け取りたくなかった。
「お付き合いしたいと思ってる人が出来たので、これからは受け取らないことにしたんです。他の人にもそう伝えておいてください。」
どうせあなた達、繋がってるんでしょう、と挑戦的な目つきで見つめたら、平塚が分かりやすくたじろぐ。
人の視線というものは、意外と気付くものだ。
行き過ぎたことさえしなければ放っておいたが。
和泉は鞄からセリーヌの財布を取り出し4500円を抜き出す。
それをそのまま平塚の胸元に押し付ける。
1500円のマニキュア三本。
消費税分は大目に見てほしい。
「では、そういうことで。」
それだけ言うと和泉は素早く踵を返す。
勝手な女だとか、何とでも言うがいい。
今まで何万もする物を色々と受け取ってきて、本命が出来たからもう要らない、なんて。
だけど、和泉はちゃんと告白された時に言ったのだ。
付き合えない、あなたを好きになることはない、あなたに興味はないと。
何か贈られる度にも言っていたのだ。
迷惑だ、要らない、見返りなんてするつもりもないと。
それでも良いと言って、バッグやらアクセサリーやらを贈ってきたのはそっちだ。
最悪後ろから殴られることも覚悟していたが、それはなかった。
彼にも矜恃はあるだろうから、当たり前か。


