突然現れた平塚という男は当然のようにそれをレジに持って行く。
和泉はそれをムスッとした顔で見送る。

この間に何もなかったかのように去ってやろうかと思った。
けれど彼は和泉の性格も主張も分かった上でこうやって和泉の横に来たのだ。
いっそストーカーまがいのことをしてくれれば警察にも突き出せるのに。
なまじ聞き分けが良いだけにどう対処すればいいのか判断に困る。

和泉がふっと息を吐く。
男が近づいてくる気配がする。

顔を上げれば小さな紙袋を片手に男がにこやかに歩いてくる。


「はい、これ。良かったら使って。」


差し出された紙袋を和泉はじっと見る。
その三秒ほどの沈黙を和泉の拒否と受け取った男は言い聞かせるように言葉を重ねる。


「和泉さんが俺に興味がないことは分かってるし、これをダシに無理やりどうこうしようだなんて考えてないよ。」