甘い誘惑ショコラのネイル。
そんな宣伝文句と共に行儀良く陳列しているネイル達。
和泉はその前でふと足を止めた。
ダークブラウンのネイルは持っていなかったな、と思いじっと見つめる。
限定品らしく数量が限られているらしい。
どうしようか、と和泉は思う。
和泉はいつもマニキュアはアナスイのものを買っている。
あまり違うブランドの物を使い比べたことがないのでこのブランドのものが良い物かどうか分からない。
和泉がその場で足踏みしていた時。
後ろから声をかけられた。
「和泉さん。」
やや低めの男の声だった。
振り向けば見たこともない男。
「誰ですか?」
「経営の平塚だよ。」
「覚えがないです。」
和泉のバッサリとした切り返しにも男は困ったように笑うばかりで怒った様子はない。
「半年前に和泉さんに告白したんだけど、覚えてない?」
「そんなものいちいち覚えてませんよ。」
「相変わらずだなぁ。」
男はすっと和泉の横に来た。
そして和泉が見ていたショコラのネイルを一つ取る。
和泉は男の様子に眉をひそめた。
「何のつもりか知りませんけど、私の答えは変わりませんから。」
「分かってるよ。和泉さんが俺と付き合う気は毛頭ないってことは。」
男は機嫌良さそうにそう言うと、その場にあった三種類ほどのマニキュアも取っていく。
ダークブラウンにミルクチョコと少しだけ色が違うものらしい。


