「大谷さんは、今彼女いないんですか?」

「今はいないんじゃないか。二ヶ月ほど前に別れた話は聞いたが。それから新しい彼女が出来たとは聞いていないな。」

「許嫁とかもいないんですか?」

「そういう話は聞いたことないからいないと思うぞ。」


ズズーッと音をたててアイスコーヒーを啜る寺田総馬。

和泉はペラリと雑誌を捲る。
鞄特集の中でトフ&ロードストーンのポシェットが目に付いた。
落ち着いた色合い。
シックにまとめられていて和泉好みだ。
良いな、と思ったので心の中にページ数を留めておく。
三万六千円。



「和泉さんはお金持ちと結婚したいのか?」

「はい。玉の輿狙ってます。」

「でも和泉さんだって十分にお金持ちじゃないか?」

「は?」


パッと和泉は顔を上げた。

和泉の家はそこそこの一般家庭だ。
両親共教師のどこにでもある中流。
豊かではあるだろうが、お金持ちと言われるほどではない。