「どうして諜報部に入ろうと思ったんですか?」

「どうして、か。やっぱり給料が良いからなぁ。あとあそこに入るの難しいだろ?そういうの燃えるんだよな。」


絶対入ってやる、って気になる、と大谷は言う。
和泉は高校と大学と二回受験を経験したが正直燃えるという感覚はなかったので共感は出来なかったが、やはり賢い人はそういうのも楽しむのだろうな、と思った。

その時、遠くのテーブルから大谷さんが呼ばれた。
ごめんね、と和泉に軽く頭を下げた彼に慌てて声をかける。


「今度またゆっくりお話したいです。」


まさか和泉からそんなことを言われるとは思ってなかったのか、大谷さんはポカンとした顔をした。
細められていた目が心なしか見開かれている。
さっきまでの作られた上品な笑い方や表情とは違い、それは素の顔で、なんだか無防備だった。

初めて大谷さんの本当の表情が見えた気がして和泉は口元を緩める。
それにつられるかのように大谷さんもゆっくりと微笑んだ。


「勿論、よろこんで。俺から連絡するね。」

「はい。」


また、今度。
楽しみだと素直に思える自分がなんだか新鮮だった。

それから二時間ほどで、和やかだったパーティーはお開きになった。