けれど大谷の言っていることも分からないでもない。
和泉も自分が一番大事だと思っている人間だからだ。
どんなに大事だ大切だと言っても、自分の命に代えてまでもその人を助けないように。
友達が悪事に巻き込まれたとしても、大抵の人は自分は火の粉を浴びないように逃げるだろう。

結局、ある程度命の保証がある生活が送れているから友情だ恋人だを大切にできるのだろうか。


「とりあえず、総馬の友達やってて悪いことはないよ。現に、俺は今総馬と友人やってるおかげで和泉さんみたいな滅多にいない美人と知り合うことが出来た。」

「そういうことをよく平気で言えますね。」


和泉が胡散臭そうな目で見れば、ニッコリと張り付いた笑みを浮かべる大谷。

「そういえば、和泉さんはいくつ?」

「大谷さんの二つ下ですよ。」

「一回生か。なんだか響きが懐かしいな。」


そう言う大谷は三回生だな、と和泉は思った。
最近は三回生から就職活動が始まるらしいから、彼ももう始めているのだろうか。

始めていなくても、なんらかの進路は考えているだろう。


「大谷さんは、卒業したらどうするつもりですか?」

「俺か?俺は諜報部に入るつもりでいるよ。」


ぶっと、和泉は飲み物を吹き出しそうになる。
矜持と尊厳でなんとか踏みとどまり、大谷を見つめる。

諜報部といえば、エリート中のエリートじゃないか。
この国の最高峰の大学の一握りしか行けない機関。

今更ながらにどこの大学か聞けば、最難関大学の名前を出された。

隠したつもりでいたのに、和泉が驚いているのが伝わったのか「俺ってそんなに頭悪そうに見えるのか」と笑いながら言われた。

そんなことないですよ、と言いながら和泉は生まれて初めてといっていいくらいに期待に胸を膨らませていた。

なかなか、良い人じゃないか、大谷さん。
頭も良く、お金持ち。
将来も安定している。
性格はアレだが、和泉だって人のことはとやかく言えない性格だ。
それに寺田総馬の幸せ思考よりは己の利害を第一に考える大谷さんの方が共感できる。

大谷さんに出会わせてくれた寺田総馬に感謝だ。

ようやく見つけた最高の人に和泉は心弾ませる。
それが表情に出ていたのか、「なに笑ってるの」と大谷さんにからかわれた。
いつもより心持ち二割増しで柔らかく微笑みながら「なんでもないです」と和泉は言う。

こうなったら己が持つ美貌を存分に活用させていただこう。

まずはもっと相手について知らないと。