「和泉さんって、総馬くんと付き合ってるの?」
ここ数日大学内を歩いてるときチラチラと視線を感じると思ってたらこれだったのか。
めんどくさい、と思ったが表情には出さず目の前の女の子を見つめる。
誰だかは知らないが向こうは和泉を知っているらしい。
ふわふわとした栗色の髪。
上の方が黒くなっている。
染めてるのか、似合ってないな。
和泉は冷静にそう思った。
別に髪を染めるのはいいが自分に似合うかどうかはもっとよく考えた方がいいと思う。
大人しめの顔なんだから控えめで慎ましやかな雰囲気で攻めればいいものを、なんでこんな明るい色にしたのだろう。
大人しい顔と派手な髪の明るさはミスマッチだ。
顔が派手だったら似合ってただろうに。
頭が軽そうに見えてしまう。
「付き合ってないですよ。」
「そうなの?」
栗色の彼女は目をパチクリさせた。
道で一緒に歩いてるところ見た人が結構いてさー、と言われた。
ラーメン屋の帰りの時か。
見られてたのか、と和泉は意外な気がした。
「さっき図書館で総馬くんと会ってね。」
栗色の彼女はそう続ける。
「なんか必死に調べててさ、総馬くんってレポートいつも余裕で提出してるから珍しいなって思って声かけたの。」
コロコロと高めの彼女の声が耳を転がる。
「そしたらさー、二十年前の戦争のこと調べてて。総馬くんの専攻と全然関係ないじゃんって言ったら和泉さんと同レベルで話せるようになりたいんだって言ってたよ。」
「……はぁ。」
「和泉さん総馬くんに何か言ったの?」
「まぁ、それっぽいことは言いましたけど……」
あれはただの和泉の不満のようなものだったのに。
適当に流しておけばいいものを、なんであの男は調べてるんだ。
そんなに本気で受け止められるとは思ってなかった和泉は少し顔を歪める。


