「優先順位が無い人なのかなって、思っただけです。」

「優先順位?」

「この人よりはこの人の方が大事って、あるでしょう。ある程度は。」

「君は友人に順位をつける人なのか?」


寺田総馬の眉間にシワが寄る。
どうやら和泉とこの男は本当に合わないらしい。
和泉の言葉に彼はどんどん気を悪くしている。
やっぱり和泉の考え方はこの男には一生理解できないだろう。

例えば、と和泉は切り出す。


「高校の時、私には一人友人と呼べる人がいたのですが。」

「意外だ。」

「その人とあなたからそれぞれ同じ日に映画に誘われたなら、私はその人と映画を見ますね。」

「……」


寺田総馬はしばらく固まった。
よく分からない、とその顔に書いてある。

ほら、やっぱり分からないんだな、と和泉は思う。


「約束がかぶったなら、三人で一緒に行けばいいじゃないか。」

「まぁ、それが一番いいんでしょうが。要はどっちが好きかです。」

「どっちも好きでいいだろう。」

「じゃあ、どっちと一緒に居るのが好きか、です。」

「誰とでも楽しいじゃないか。」


やけに突っかかってくる寺田総馬。
その顔には少し怒りが滲んでいる。

めんどくさい。
これだからこの男は嫌いだ。
話はずっと平行線。

終わりが見えない話に和泉は終止符を打つ。


「寺田さんには分からない話ですよ。」

「じゃあ分かるように説明してくれ。八万もする靴を買うんだぞ、俺は。」

「靴は要らないです。この話はここで終わりましょう。」


和泉はそう言い捨てると腰を上げる。