和泉はもう体裁をとろうという気も起こらず腕を振りほどこうともがく。
「離して!!助けてください!この人変な人です!」
「誤解だ!友人なんだ!喧嘩してるだけで!」
和泉の叫び声に周囲にいた客もなんだなんだと集まってくる。
ほどほどにガタイの良い精悍な顔立ちの青年から逃れようとしているか弱そうな美人。
いかんせん、寺田総馬がもっとマッチョだったり、あるいはもっとストーカーをしそうな見た目だったら和泉が襲われていると見られただろう。
だが、周囲の客や店員から見たらこれはどう見ても。
イケメンと美人のカップルの喧嘩にしか見えなかった。
寺田総馬が主張した友達よりも恋人同士と言われた方が納得出来る絵面だったのだ。
和泉と寺田総馬は。
「えっと、他のお客様の迷惑になる行為はおやめください……」
「兄ちゃんそんな可愛い彼女さんに暴力はいかんよー。」
「若いねぇ。」
ありえない。
ふざけんな他人事だと思って。
和泉が全く助けてくれない周囲を呪い殺さんばかりに見つめていると、寺田総馬にくいっと腕を引かれた。
「すまないが、迷惑を承知で頼む。話を聞いてくれないか。」
「………」
和泉はムッスリとした顔のまま考えを巡らせる。


