「和泉さんが言ってたことの意味を考えてみたんだが、駄目だな。全然分からん。」


眉を下げながらそう言ってきた寺田総馬に和泉は思わず舌打ちをする。
もう二度と会わないだろうと思ってたのに。

寺田総馬が和泉のことを探しているということを何人かから伝えられていたが、会いたくなかったのであれから避けていた。
しかし、五日目にしてついに捕まってしまった。

古本屋で本を選んでいた時、棚を曲がろうとしたら突然人が出てきたのだ。
すいません、と謝ろうとして顔を上げて。
目の前にはやけにニコニコした男。

和泉の眉間に思いっきりシワがよった。
鮮やかなライトグリーンのシャツを着た寺田総馬だった。



「和泉さんと話したくてずっと探してたんだ。見つかって良かった。」

「……なんで私が古本屋にいることを?」

「ん?和泉さんのファンの何人かに聞いたんだ。和泉さん読書好きなんだろう?」

「ストーカーかあんたは。」


いや、私のファンだという奴らの方がストーカーっぽいな。
まぁそいつらは害がないからいい。
遠巻きに見てくるだけで変に接触しようとはしない奴らだから。
和泉はそう考えてから、キッと目をつり上げて寺田総馬を睨む。

和泉の迫力に押されたのか、寺田総馬は少したじろぐ。


「おぉ、美人の睨みは怖いな。」

「失礼を承知で言いますが、私はあなたが嫌いです。」

「そうか。まぁ、俺も和泉さんにはあまり良い印象を持ってないからおあいこだな。」

「そうですね。私たちが交流してもお互いに良いことがなさそうなのでこれからは話さない方向で行きましょう。では、さよなら。」

「え、ちょっと待ってくれ!」


早足で去ろうとしたのにガシッと腕を掴まれた。
何故だ。
何故止めたのだこのクソ男。